法定相続分での相続登記の注意点

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法定相続分で相続すれば何の問題もないと思っていませんか?必ずしもそうではないことをご説明します。

法定相続分での相続登記は1人が単独で申請できる

遺産分割協議による場合は、相続人の1人が単独で名義変更の申請をすることはできませんが、法定相続による名義変更は、相続人が複数いても相続人の1人が名義変更の申請をすることができます。

ただし、できるということであって、推奨されるやり方ではありません。後述しますが、いろいろとリスクがあります。

1人が単独で登記申請をするリスク

登記識別情報通知を発行されない人がでる

1人が単独で登記申請をすると、不動産の売却など処分をするときに必要な「登記識別情報通知」が発行されるのは申請人になった相続人だけです。そのほかの相続人は、登記名義人にはなれるものの登記識別情報通知の交付を受けることができません。

登記識別情報通知がなくても共有者であることに変わりはありませんが、売却等の際には、司法書士による本人確認情報の作成などに、余計な時間と費用がかかります。

遺言に従わない登記が行われる可能性がある

相続による財産の分配は、法定相続分よりも遺言が優先されます。

ところが、遺言書があることで安心して登記が遅れると、とんでもないことになることがあります。

ひとつの例

子がいない夫婦がいます。夫の親はすでに亡く、肉親としては弟が1人います。

夫は、自分の死後は、自宅を含む財産は全てを妻に相続させという遺言書を作成しました。

夫が亡くなり、妻は遺言書にしたがって全ての財産を相続するつもりでした。ただ、いろいろやらなければならないことが多くて、不動産の名義変更は後回しにしていました。

その間に、亡くなった夫の弟が、勝手に不動産の所有権移転登記をしてしまいました。

もちろん、道義的にも民事的にも問題はありますが、弟は法定相続人の一人なので可能ではあるのです。

この場合、遺言書をたてにとって争えば、法律は妻に味方してくれます。

ただし、

その弟が手回しがよく、持ち分を担保にお金を借りたり、持ち分を売却してしまえば、難しくなります。

民法には、登記していないと第三者に対抗できないという趣旨の規定があるからです。

改正民法899条の2第1項
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

相続による財産の分配は、法定相続分よりも遺言が優先ですが、登記しなければ遺言の効力が及ばないことがあるのです。権利が生じたらすばやく登記しなければなりません。

遺産分割協議でも同様

なお、この問題は、遺言により法定相続分以上の財産を相続した場合だけではなく、相続人どうしの遺産分割協議による場合も同様です。

遺言や遺産分割協議の内容を知らない、善意の第三者の権利を守るための規定です。

すぐに登記をしなければならない

登記を後回しにしているうちにこういうことをされると、第三者には対抗できないので、大変に難しい状態になってしまいます。

このような問題を回避するために、遺言や遺産分割協議で相続財産が指定された相続人は、直ちに所有権移転登記を行う必要があります。