特別受益の持ち戻しを免除したいときの遺言

Last Updated on 2021年2月10日 by かつや

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お父さんが亡くなったときに他の兄弟から「あなたはもうたっぷりもらっているでしょう。その上相続ももらう気なの?」という声があがることがあります。実はこの言い分には法律的な根拠があるのです。

特別受益とは

特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人の生前に贈与を受けるなどにより、他の相続人より多く受けた利益のことです。

言い換えれば、相続の前に、つまり生前に贈与などで受け取った金銭等のことです。

金銭だけでなく、土地や建物の贈与も特別受益に当たるし、土地や建物の無償賃貸も特別受益に当たる可能性があります。

親としては「あの子は苦労しているから助けてやらなければ」と思って他の子にはしていない援助をする場合があります。そして、他の子も理解してくれるだろうと思っています。

ところが他の兄弟姉妹は、不公平だと思って不満をためていることが多いので、親が亡くなったとたんに兄弟姉妹間で言い合いになってしまうことがあるのです。

特別受益の持ち戻しとは

つまり、たくさんもらってきた子が相続も等分で持って行くのは不公平だという主張です。

この主張には法律的な根拠もあります。

生前にもらったものによる不公平を解消するために、もらった分を「遺産の前渡し」とみなして、相続人の取得分を減らす仕組みで、民法に定めがあります。

民法第903条
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする

これを、特別受益の持ち戻しといいます。

先にもらったものが全部対象になるわけではありませんが、該当する部分は相続財産と相殺されてしまうのです。

持戻しの免除

親(被相続人)が、相続の前渡しのつもりで与えていたのであれば別ですが、(かわいそうなので)特別に援助しなければと思っていたのであれば、親の思惑と違ってしまいます。

そこで、

被相続人の意思で、特別受益の持ち戻しをさせない方法があります。

民法903条の3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

被相続人が特別受益の持戻しをしないように、という意思を表示した場合は、持戻しをしなくてもよくなります。

「意思を表示」する方法は、口頭でも有効ですが証拠が残らないので争いになれば不利です。一般的には遺言によって意思を表示します。

免除があったとしても遺留分を侵害する場合は、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。

遺言書の文例

遺言書の文例は次のようになります。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、以下のとおり遺言する。
(略)
〇、遺言者〇〇〇〇は、これまでに長女〇〇〇〇に与えた生前贈与について、持ち戻しを免除する。

令和〇年〇月〇日

遺言者住所         
遺言者氏名        印

上記は、「金〇〇万円の生前贈与」などと具体的に書く場合もあります。また、事情によっては付言として「長女〇〇〇〇に与えた生前贈与ついて持ち戻しを免除するのは、その経済状態を考慮してのことです。他の相続人は遺言者の遺志を理解し遺留分減殺請求をしないことを希望します。」などと付け加えた方がよいでしょう。

遺言については、素人判断をしないことが重要だと思います。遺言についての専門家は、司法書士、弁護士です。複雑なケースでは、少々お金がかかっても専門家の助力を得た方がよいでしょう。